2018年12月7日 第3回原子力規制庁交渉報告


報告①
モニタリングポストの継続配置を求める市民の会
3回原子力規制庁交渉を行いました。

 2018127日、モニタリングポスト(正式名称:リアルタイム線量測定システム。以下、MP)の継続配置を求める市民の会は参議院会館にて、第3回原子力規制庁交渉を行いました。原子力規制庁からは原子力規制委員会監視情報課・武山松次課長、滝田俊宏課長補佐、斉藤公明参与の3名が出席、市民の会8名が交渉に臨みました(参加者数30名)。
 交渉の冒頭、今年320日、原子力規制委員会が発表したMP2400台撤去方針に対して高まった世論や複数の自治体や議会が継続配置を求める意見書を提出したことを振り返り、18回開催された住民説明会を通して見えてきた問題点と第3回交渉の要請事項を共有するために、市民の会作成のプレゼンテーションが行われました。プレゼンテーションは市民の会HPをご覧ください。
 国会が紛糾する中、金子恵美衆議院議員が同席し、原子力規制委員会に対し県民の訴えに沿う判断を行うようにと同じ福島県民の立場から力強い訴えがありました。
 交渉は2時間にわたり、そのやりとりの要点は別紙にまとめました。またIWJUPLANのご協力により動画も公開されていますので、参考にしてください。

■第3回交渉で明らかになったこと
 以下、今回の交渉で明らかになったことを書き出します。○は規制庁から引き出すことができた見解や交渉の成果、●は問題点・今後の課題として明らかになったことと、それに対する市民の会の見解とします。

○住民説明会で撤去反対の意見が相次いだため、かなり早い時点で強制的な撤去はできないと判断した。

○従って、住民説明会の目的が「撤去の不安を払拭するために丁寧に説明する」から「住民の声を聴く」に変わっていった。

18回の住民説明会を開催しても住民の不安を払拭することができなかったことを認めた。

MPの意味や役割が規制庁と住民では異なっていることを認めた。

○廃炉作業の進め方はまだ分からないところがあるので、それに伴う危険性はあると認識しているとの発言があった。

20191月以降に規制委員会に住民説明会の報告をする。それを受けて住民の意見を考慮しながら、MP設置の事業主で決定権がある規制委員会が、最終決定を下すことになる。
→市民の会としては、撤去方針を出した規制委員会が撤去を撤回するとは到底思えない。撤去するかしないかの決定権は住民側にあることを強く訴えていく。

20193月に復興庁の後継組織の方向性が出てくることになるが、その時点で、320日方針である2020年度以降の見直し案も決定することが示唆された。
→これは、市民の会として最も阻止したいと奮闘してきた最悪の流れ。
→金子恵美議員の発言:復興庁の後継組織論と福島県民の訴えをどのように受けとめるかは別問題とすべき。

●一時移転の基準とする20μS/hや原子力災害指針防護措置目的とする20mSV/yに対する規制庁の見解はとても楽観的であり、これ以上の追加被ばくを受容できないとする住民の見解とかなり乖離していることが明らかになり、福島原発事故から学んでいない規制庁の姿が露呈した。
○しかし、科学者として出席した斉藤参与から「20mSV/yには絶対的な数値ではなく不確実性を伴う。あくまでも目安である」との見解を引き出せたことは成果である。

●以前として、緊急時の避難指示は複数のシナリオから選ぶとする政府や規制庁の見解は、既に福島原発事故を経験した住民には説得力のない話である。

●「緊急時には勝手にMPを見に行かないでほしい」発言は、第2回交渉の発言からややトーンダウンした印象を持った。反応の大きさが要因であるかもしれない。しかし、1週間で100mSV未満を屋内退避の目安とは発表した更田委員長の発言との整合性を考えれば、変わらず被ばく受容を強いる発言に他ならない。

●今後のMP維持費については事業継続の方針の基盤となるため、明言を避けた。

○継続配置、または撤去の決定権は住民側にあることの確認について、規制庁3名の個人的な「住民の意見を反映させていく」との見解を引き出せたのは成果。
●しかし、事業主である規制委員会に決定権があるとの意向は堅持。
3名の発言は、住民説明会の担当者として住民の声は届けたが、規制委員会の決定を覆ることにはならなかったという言い訳に使われる危惧を覚える。

■今後の市民の会の動き方について
 第3回交渉を経て喫緊の課題も浮き彫りになりました。今後は次のような動きを始めたいと思います。
・各地の市民の会と連携を取り、自治体レベルでの継続した訴えを作り出す。
・福島県に継続配置に向けた具体的な提案を行い、協議を重ねる。
2020年度以降の予算について、国会議員との協議を重ねる。

 MP撤去問題は福島原発事故の「見えない化」を生み出し、それは全国の再稼働の下準備となります。全国民の課題としてMP継続配置を求める運動に繋がってくださいますように、お願い致します。

モニタリングポストの継続配置を求める市民の会
963-0101 福島県郡山市安積町日出山1-31



報告②
モニタリングポストの継続配置を求める市民の会
3回原子力規制庁交渉報告

1,住民説明会を振り返っての意見や感想について
武山課長:
 殆どが継続配置を求める声であった。廃炉作業が続く中、MPを毎日見ている、役立てている方がいることを知った。
滝田課長補佐:
 自分が分からなかった意見を聞くことができた。維持するのか新たなものもトータルに考える材料にしていきたい。
斉藤参与:
 説明会には出席しなかった。研究者として線量の解析をしているが、今回の継続を求める意図はそこにはなく、安全を確保する手段として継続して持ちたいと意見であると理解した。

2,住民説明会の目的や趣旨について
・当初の見直しの方針が出た時には、撤去されても不安を与えないようにするための説明会であったが、その後、更田委員長の「強行はしてはいけない」との発言もあったように「住民の声を聞くことに主眼を置く」に変わっていった。
・「住民説明会を開催して、住民の不安を払拭することができたと思うか?」の問いに「払拭されていない」と返答。

3,規制庁と住民がMPに対して持っている意味や役割について
・住民がMPに持っている意味や役割が、規制委員会のそれとは大きく違っていることを認識できたかとの問いに対して、規制庁は科学的データの収集と空間線量の監視と目的としているが、住民は自分の目で確かめたいとの目的を持っていると認識。想定していた役割とは違っていたことを知った。

4,規制委員会への報告について
・住民にとってのMPの役割が分かった今、どのような言葉や内容で規制委員会に報告するのかとの問いに対して、説明会の議事録にも出ている発言について分かるような形で伝える。地震などがあったときにはMPを見に行って、自分で確認したいということを説明・報告することになると思うと返答。

5,住民説明会終了後や今後について
・住民説明会は今年末で終了となる。
1月以降は規制委員会に報告する=意見を聞くことになる。320日方針について協議し決定するのは事業主である規制委員会にあるから。

6,撤去または継続配置の決定権について
市民の会:
 決定権がこの方針を出した規制委員会にあることを知って衝撃を受けている。方針を出した規制委員会が撤回するとは思えない。第三者の意見を聞くのではないか。
規制庁:
 住民の意見を考慮しながら、最終的には規制委員会が決定する。
市民の会:
 住民の意見がどう反映するかは、武山課長、滝田課長補佐にかかっているのでは?
規制庁:報告する立場なので、そうです。

7,2019年度以降の予算について
規制庁:
2019年度は維持する費用として6億円を財務省に概算要求している。
2020年度以降は?との問いに、復興庁がどうなってくるのか次第。来年3月にどこまで決められるのかは難しい。
市民の会:
・今の発言に大変混乱している。この流れにならないように、これまで反対してきた。来年3月で決定されたことが、最終決定になるのかどうかが、非常に不安である。
金子議員:
・復興庁の基本方針は3月に出され、後継組織の方向性も見えてくる。しかし、これは組織論。重要なのは、原発事故がなければ苦しむ必要がなかったこと。だから、これだけの意見が福島県民から出ていて、これをどのように受けとめるかということが重要。吉野前復興大臣は復興特別委員会で規制庁にしっかり言っておくと言っていた。内堀知事も慎重に対応してほしいと言っている。事務方である規制庁は委員会で決めることだと逃げないでほしい。起こらないと言われていた原発事故が起きた今、福島県民の声は日本や世界を含めた発言となっている。今、とても重要な交渉を行っている。
市民の会:
320日方針以降、私たちにとってMPは空間線量を唯一目視できる知る権利であり、撤去するかしないかの決定権は私たちにあると主張してきた。4月から時間も労力も注ぎ込んできた。それが、決定権が原子力を推進したい規制委員会に戻ることは到底受け入れられない。規制委員会に私たちの声が届くことは、現状では信じられない。決定権は日本国憲法に保障されている最低限度の健康な生活を送ることができる私たちの権利である。
・いわき市四倉会場で規制庁は被災者側に立っていると、規制庁は発言した。原発事故を被災した自治体・住民の声をどのように扱う、伝えるのか。充分に役割を果たしていただきたいと切にお願いする。

8,廃炉作業の危険性について
・廃炉作業に伴う危険性は起こり得るとの認識は変わっていないのかとの問いに、廃炉作業の進め方はまだ分からないところが結構あると回答。

9.20μS/h20mSV/yについて
市民の会:
住民説明会で「あれほどの事態にならない」との発言に非常ショックを受けている。私たちが受けた影響を楽観視されている発言。一時移転の基準である20  μS/hで避難指示区域外が線引きされると、私たちは何も求められない。
規制庁:
20μS/hは原子力災害指針で防護措置の目的として、IAEAと同基準。
市民の会:
・既に被ばくリスクを抱えて生活しているのに、さらに上乗せが強いられることは許し難い。
20mSV/yの科学的根拠は?仮説に過ぎないのでは?仮説を私たちに押しつけているのでは?事後直後の暫定的な数値をいつまで持ち出すのか?
規制庁:
20mSV/yが事故直後のシナリオを政府がいくつか作っているうちのひとつ。被ばくから逃げるのは望ましいが、例えば逃げることによってリスクを追う高齢者もいる。バランスを考えつつ基準とするのが、20mSV/y。ただ、不確実性であり絶対的な数値ではない。
市民の会:
・その通り、その数値はあくまで目安、不確実性を持っている。避難は自分の決定であるはず。この数値だったら、大丈夫なんてどこにも確実な根拠はない。それなのに、なぜ国民に押しつけるのか。
規制庁:
・押しつけはしていない。当然避難を決定するのは住民であり、あくまで20mSV/yは目安である。

10,「勝手に避難しないでほしい」発言について
市民の会:
20mSV/yは強制避難区域の解除に使われ、避難者の住宅支援打ち切りと連動し国民に押しつけている。
7月の第2回交渉で「原発事故があってもMPを見に行かないでほしい。正しい情報を伝えるから勝手に避難しないでほしい」との発言があった。衝撃と痛み、こんなことをまだ言われるのかと感じた。
・その後、MP撤去は福島県民の問題だけではないと分かった。926日東海第2原発が審査に合格したが、約96万人の避難計画はない。1018日に更田委員長は「目安として1週間で100ミリシーベルト以下であれば避難をする必要はない」と一生分の被ばく我慢量を1週間で浴びても大丈夫だと発言。この一連の流れから分かるのは、原発事故は起きたら何もできないということ。人々を避難させることもできない。これは全国的に拡がる再稼働の下準備である。事故が起きても避難しなくてもよい。正しい情報は出す自分たちを信用してくれと言いながら、国民のいのちを守ろうとする気が全く無い。事故が起きたら、原子力規制委員会ですら何もできないということが分かった。事実、福島事故で上手に避難できた人などいなかった。
規制庁:
20μS/hは一時の目安。放射能がプルームとなって移動し放射能が降ってくる時には屋内退避が基本。地上に降りてプルームがなくなっている状態で移転となる。
市民の会:
・それは既に福島原発事故で、自分たちは経験済みだ。
・どんな原発事故でも安定ヨウ素剤を服用して、できるだけ遠くに離れることが唯一の被ばく防護策ではないか。
規制庁:
・それは事故の状況による。事故が短時間で済むなら屋内退避のほうが被ばくは少ない。大事故で表面沈着が大きい場合は避難。判断は難しい。事故時MPを見に行かないのはある意味で真理。しかし、正しい情報が国から伝わっていなかった経験からMPを見に行きたいという気持ちがあると理解している。
市民の会:
・事故から8年経ち、規制庁の感覚が麻痺しているように思う。自分たちに被ばくが少なく済むような考慮はされていないと経験した。みなさんが言っている仮定が崩れた後の私たちの主張だということを分かってほしい。私たちは予防原則に立っているのだ。
規制庁:
・自分はあくまで不要な被ばくはしてほしくないと思ったので、MPを見に行かないでほしいといった。ただ避難してはいけないと言っているのではない。
市民の会:
・あの時、正しい情報が伝わっておらず、正しく判断できなかった。放射能の実態が分からないのが大きな恐怖なのだと、繰り返し訴える。

11,今後の維持費について
規制庁:自治体と協力して事業を継続する、国が獲得して自治体に交付金を出すことも一案。どのような形が市町村によいのかを考えいく。自治体が負担するかどうかも決めてもいないし、しないということも決めていない。

122019年度の予算について
規制庁:維持管理費は6億円。移設(撤去を含む)費用として1億円。

13,要請事項に関する確認
1,リアルタイム線量測定システムは、国の責任において廃炉まで継続をさせること。
2,継続のために必要な予算は国の責任において確保すること。
市民の会:住民説明会での声を改めて要請事項として求める。
3,被ばく防護における格差が生じないように、自治体との協議には必ず県を交えること。
市民の会:MPの撤去直前に撤回になった西郷村のように自治体の意向と住民の意向が違う場合がある。汚染が少ないと言われる会津地方でも撤去は反対だった。このように自治体の決定に住民の声が反映されていないこともある。よって、自治体との直接協議ではなく、県を交えてやり取りをしてほしい。福島県も話し合いに入る準備ができている。
4,専門家の意見を聞く際には、市民の会推薦の専門家も交えること。
市民の会:保留とする
5,見直し案については方針として強行せず、今後も県・自治体・市民の会との協議を続けること。
市民の会:住民の声をどのように扱うのかを県民は注目している。規制委員会への不信感は、事故後の対応を含め様々な方針決定は、自治体や被害者の声を無視して国の主導で強行に進めているところにある。MP撤去が強行されれば、不信感はさらに強まる。今後も協議を継続することを強く求める。
要請事項を受けて
規制庁:廃炉まで予算を取ることを規制委員会に報告したうえで、確認したい。これまで同様、県や市民とも話し合いをしていきたい。

14,再度、決定権は住民にあることを確認
市民の会:決定権は私たち市民にあることを再確認したい。
武山課長:
・みなさんのお考えに従って決めほしいと言っていることだと考えている。
・最終的には事業主体である国の判断に成らざるを得ないと思っている。
・ただ、みなさんの意見を考えた上でやっていくと思っている。
滝田課長補佐:
・行政の立場から言えば自分たちは国民の公僕である。
・ひとつの方針としての行政目的があれば、ある程度我々自身が決めてやっていかなくてはならない。
・最終的には国民の意思決定が国会に反映され基準や法律が決まっていく。
・その中で、我々ができることを最大限にやっていく。
斉藤参与:
・住民の考え方を最大限に尊重していくことが原則。
・今年4月に現役職に就いた。これまで感じたのは、原発事故への国の準備が不充分であったこと。
・積み重なった不信感やうまく意思疎通ができなかったことから、会話がうまくいかないことやMPに関してもお互いの誤解があるように思える。
MPに関しては、充分に住民の意見を聴いて、意見を反映した形で自分を含め担当者も考えていくことになると思う。
市民の会:
・今、住民の意見を反映させるとの意見を伺った。
・見直し案を最終決定する前に協議できるか。
規制庁:まずは県や自治体と…になる。市民の会がどういう形で同席になるのかは分からないが、まずは県と自治体との協議になる。

15,市民の会から意見
・福島原発事故後、海外諸国は自国民に帰国を通達していた。
・既に存在している日本の法律に照らし合わせた施策をとってほしい。
・原発事故で学校現場が混乱した。
・被ばくの影響を減らすために保養に出かける子ども達がいる。
・焼却炉建設に多額の税金を投入しているのに、たった6億円が確保できないのはおかしい。
・国は国民一人ひとりで成り立っている。一人ひとりの国民を大事にするためにMPは撤去しないでほしい。

16,市民の会のまとめ
 原発事故から8年、私たちは何を学んできたのでしょうか。過ちは二度と繰り返さないと責任を果たす姿、未来を守る姿を子ども達に見せていきたいのです。この中に加わってください。

交渉終了後に記者会見を開催
記者:規制庁から「住民のみなさんの気持ちを尊重する」との発言があったが、それは前進したことか。
市民の会:・前進だと思う。尊重という言葉を出さなければならなかったと考えたい。
記者:全国とはどのように繋がって行くのか、また繋がっているのか。
市民の会:
・署名を呼びかけてつながっていく。
・県外自治体議会でも請願が採択され意見書が通っているところがある。
・全国放送や海外ニュースで特集が組まれ報道された。

以上